中学からの作文・論文

作文・論文を書くための本質化・論理構成・文章表現。
(基礎知識: ことわざ・慣用句、三字・四字熟語、古文、漢字)
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文章の書き出し その2

 書き出しの字数に続き、『私の文章修業』の書き出し内容を分類する。表現するプロの人たちは、どのように書き始めているのだろうか。

 51ある文章の書き出しを、主題との関連や類似語句で分けていった。その結果、「私の文章修業」という主題にはすぐ答えず、親しみや関心を誘う書き出しが多いことがわかった。多い順に、1.身近な体験を示す(33%)、2.謙遜により係留する(22%)、3.主題外から引きこむ(18%)、4.主題に関連させる(18%)、5.問いの答えを示す(10%)となった。ただし2は、3と4にも関係している。

    

 それぞれの結果を考察する。

1.身近な体験を示す
 学校での作文のことが一番多く書かれていた。書き出し17の内訳は、小学校12、中学校4、高校1、大学0となっている。小学校の作文は多くの人が体験しているので、親しみやすく分かりやすい。

読み書きは小学校に入ってから先生に教わった。 「大変は大変」 中山千夏
小学校の頃から私は作文がはなはだ苦手であった。 「死の覚悟の中で」 梅原 猛
小学校二年のとき、「なまず」という題の作文を書いた。 「綴方から大学ノートまで」 大岡 信

2.謙遜により係留する
 「自分はたいしたことない」と謙遜し、すばらしいノウハウをさりげなく文章にする― このような書き出しが多かった。
 謙遜という錨(いかり、アンカー)によって、意識を低めにつなぎ留め、あとからの感動を相対的に高める係留効果(アンカリング)がある。謙遜による意外性もあり、関心を誘う。

この原稿を書くのは気が重かった。 「読んだものがいつか肥料に」 佐多稲子
文章修業なんて言えるかどうか――。 「いつも裏口で歌った」 倉本 聰
特に文章の勉強をしたということはない。 「『百物語』その他」 井上 靖

3.主題外から引きこむ
 意外なことや、関心・興味を引くことによって読みたくなるような書き出しが見られた。これは、広告におけるAIDMA(アイドマ)の法則が応用されているとみなすことができる。すなわち、‘票圓肪輒椶気察複腺遙遙紕遑遙蕋錚遏法↓興味をもたせ(Interest)、F匹猴澣瓩鬚きたて(Desire)、さ憶させ(Memory)、ス堝阿坊襪咾弔韻襦複腺磽遙蕋錚遏法

私は生来買物下手である。 「私の『文は人なり』」 河上徹太郎
我ながらあきれかえる習性を持っている。 「『必要』に応じて」 中上建次
小説『富士』を書きあげたあと、武田は脳血栓を患った。 「絵葉書のように」 武田百合子

4.主題に関連させる
 「あなたの文章修業はどうでしたか」「何が大切ですか」といった問いに対し、文章に関連する語句を使った書き出しがあった。たとえば、「書く」「編集」「原稿」など。

私がものを書き始めてから、もう六十年になる。 「阿吽の呼吸」 宇野千代
新聞や雑誌の編集の方が、原稿を取りにおいでになる。 「ただ一度の訓示」 中村武志
私は、これまで数十年の間に、かなりたくさんのものを書いてきた。 「親 切」 坪井忠二

5.問いの答えを示す
 主題に対する答えを書き出しにしている文章が1割あった。言いかえると、核心にすぐ入らない文章が9割あることになる。
 
おいしいものを最初に食べるか、最後に食べるかは、意見の分かれるところである。しかし、おししい料理を最初に出せるということは、あとに続く料理もすばらしいにちがいない。

まずうかぶのは映像である。 「映像は頭の壁に書く」 新藤兼人
文章でも何でも最初は誰かのを真似ることからはじめるしかない。 「骨だけの文章」 倉橋由美子
「何を書くか」と「いかに書くか」とは切っても切れない関係がある。 「文体を夢見る」 丸谷才一


参考文献
週刊朝日編:私の文章修業、朝日選書、1987



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