中学からの作文・論文

作文・論文を書くための本質化・論理構成・文章表現。
(基礎知識: ことわざ・慣用句、三字・四字熟語、古文、漢字)
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物語・科学のつながり

 自分とのつながりで事実を認識する方法があります。事実と自分との関係を排除し、要素還元したり、因果関係を把握する科学の方法に対し、河合隼雄氏 は『物語と人間』で、物語による「関係付け」の大切さを述べています。

 物語の特性の中で強調したいのは、「関係付ける」働きであろう。
 非常に単純な例を考えてみよう。コップに野草の花が一つ挿してある。それだけのことなら、別に誰もその花に注目しないかもしれない。しかし、それは病気で寝ている母親を慰めようとして十歳の少女が、下校の時摘んできたのだと知ると、その花が単なる花でなくなってくる。その花を介して、その少女に親しみを感じ、その母娘の間の感情がこちらに伝わってくる。そこに「関係付け」ができてくる。
 (中略) 物語を語ることによって、母娘の関係の在り方がわかり、それに感動することによって、語り手と聞き手の間に関係が生まれ、このように「関係の輪」が広がっていくところに意味がある。関わりの中の真実が、それによって伝わっていく。
 物語が急速に価値を失うのは、近代になってからであろう。それには自然科学の果たした役割が大きい。自然科学は外的事実の間の「関係」、特にその「因果関係」を見出すことに努力するが、そのような外的事実を観察者(研究者)とは関係ないものとすることが前提となっている。このために、そこに見出されたものは、個人を超える普遍性を持っている。つまり、自然科学によって見出された結果と技術とがうまく結合すると、人間は事象の「外側に」立って、それをコントロールし、操作できる立場を獲得する。この方法があまりにも効果的であるために、人間は科学の知によってすべてのことが可能になると思ったり、科学の知こそが唯一の真理である、とするような思い違いをしたのではなかろうか。
 このような思い違いをすることによって、多くの現代人はこの世との「関係」を切断され、根無し草のようになってしまった。便利で効率よく生活することが可能になったが、いったい何のために生きているのか、その意味が急に希薄に感じられるようになったのである。「意味」とは、関係の在り方の総体のようなものである。私と私を取り巻く世界との関係がどんなものかがわからずに生きていても、「意味」が感じられないのも当然である。

2006年岡山県高校入試問題・国語 (出典 河合隼雄 『物語と人間』)より


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