中学からの作文・論文

作文・論文を書くための本質化・論理構成・文章表現。
(基礎知識: ことわざ・慣用句、三字・四字熟語、古文、漢字)
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「前者」「後者」という表現

 『知の論理』という本の中に、前者・後者が数回つかわれている文章がありました〔1〕。つぎに例を示します。

「伝統的な共同体から市民社会への移行が,もし,互酬から交換へと経済統合のパターンの変化を伴って行われたとしたら,その場合には互酬のための貨幣は交換のための貨幣に進化したのではなく,後者によって前者が駆逐されたものと理解するべきでしょう」 (丸山真人 「市場原理と共同体の問題」より)

 「後者によって前者が駆逐された」は、「交換貨幣によって互酬貨幣が駆逐された」ことを表しています。執筆者は前者・後者がわかって書きます。しかし多くの読者は、逆もどりして前者・後者を確認しなければなりません。

 自分が書いた文章を確かめました。前者・後者を五か所で使っています。そこで、別のことばに直してみました。結果は、前者・後者が明確になる反面、文が長くなりました。しかし前者の文と後者の文に分けることによって、文を短くすることができます。読み手がわかりやすいように、前者・後者はできるだけ用いないほうがよい、というのが結論です。

例1: グラフから作文する 3
 「正しい敬語を使えるようにする」を目的として、手段を考えてみましょう。手段には、自分の努力でできるものと、学校制度など自分の力では容易に解決できないものもあります。ここでは前者の立場で考えます。たとえば、つぎのような解決案が見つかったとしましょう。実現できそうならば、解決策とします。
→ ここでは自分ができることを考えます。

例2: 直感と科学とスポーツ
 都立日比谷高校と岡山朝日高校の2006年入試問題は、どちらも茂木健一郎著『脳と創造性』から出題されています。前者は直感による創造力が問題文に、後者は偶然を活かす能力が問題文になっています。
→ 都立日比谷高校は直感による創造力が問題文に、岡山朝日高校は偶然を活かす能力が問題文になっています。

例3: 自由研究に― アリの帰巣行動
 「ありの行列」のアリと「アリの体内に”歩数計”」のアリとは種類がちがう可能性があります。前者はアメリカのアリである可能性が高く、後者はアフリカのアリで、行列をつくる習性がないかもしれません。
→ 「ありの行列」のアリはアメリカのアリである可能性が高く、「アリの体内に”歩数計”」のアリはアフリカのアリで、行列をつくる習性がないかもしれません。

例4: 論文の「私」「私たち」
 「私」「私たち」は、15論文中に43個ありました。字数は30万字(≒140頁×2200字/頁)です。「私たち」は、「私たちの研究グループ」の意味と、「私たち人間」の意味で使われています。前者は、研究グループの主張を表しています。
→ 「私たちの研究グループ」は、研究グループの主張を表しています。

例5: 連想による作文と構成による作文
 連想による作文と構成による作文を比較すると、前者は書きながら思いをめぐらせ結論にいたり、後者は結論とその理由を組み立てて書く方法といえます。
→ 連想による作文は書きながら思いをめぐらせ結論にいたり、構成による作文は結論とその理由を組み立てて書く方法といえます。


参考文献
1.小林康夫・船曳建夫編集:知の論理 「市場原理と共同体の問題」(丸山真人)、東京大学出版会


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