中学からの作文・論文

作文・論文を書くための本質化・論理構成・文章表現。
(基礎知識: ことわざ・慣用句、三字・四字熟語、古文、漢字)
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文末の時制と臨場感

 地図エッセイストの今尾恵介さんが、地図をもとに峠の周辺を新聞で紹介しています。読んでいると、その場を歩いているような気がします。なぜでしょう。文末をすべて抜き出し、臨場感が生まれる理由を考えてみました。

1.実際の文章
  「今尾恵介の地図を歩く 倶利伽羅くりから峠(石川県・富山県) 重なる新旧道路・鉄道」から、一部を掲載させていただきます〔1〕。

「坂道でひと息ついて東を見渡せば、明るい緑の水田に屋敷森のある家々が島のように散居する砺波平野が広がっている。
 砺波地方の地名の起源となったという砺波山から尾根を進めば倶利伽羅峠だ。その北へ登れば周囲で最も高い国見山で、見通しが良いので三角点が設置されている。あいにくの靄もやで砺波平野は霞んでいたが、空気が澄めば案内板に描かれた絵のように、立山はもちろん槍ヶ岳や白馬岳も一望らしい。」

2.出現順の文末
 30の文末を出現順にならべます。左側の上から下へ、右側の上から下へと続きます。

 改修が行われた。
 その例に漏れない。
 新道を走り抜けている。
 両陣営が激突した。
 鳥居前には馬上姿の義仲像。
 西へたどってみよう。
 平野が広がっている。
 尾根を進めば倶利伽羅峠だ。
 三角点が設置されている。
 白馬岳も一望らしい。
 有磯海と呼ばれた富山湾。
 門前町でもある。
 説があるのを思い出した。
 山を下りた。
 天田峠への坂道。
 
 地名が場所を説明している。
 旧道が大きく南へ迂回する。
 道が続いていたようだ。
 天田峠を目指すことにしよう。
 天田峠に着く。
 屈曲を手直ししたとある。
 10メートル開削されたわけだ。
 新トンネルを掘った。
 格段に楽になった。
 輸送力が増強されている。
 トンネルは長くなる。
 在来線の倍以上の6.5キロ。
 興味深い地域である。
 トンネルで過ぎてしまう。
 仕事が減らないのはどうして
 だろうか。

3.文末の分類
 文末を、「過去の事実」 「現在の事実」 「行動」 「考え」 に分けることができます。

過去の事実 (4)
 改修が行われた
 両陣営が激突した
 屈曲を手直ししたとある。
 新トンネルを掘った


現在の事実 (13)
 新道を走り抜けている。
 鳥居前には馬上姿の義仲像。
 平野が広がっている。
 尾根を進めば倶利伽羅峠だ。
 三角点が設置されている。
 有磯海と呼ばれた富山湾。
 門前町でもある。
 天田峠への坂道。
 旧道が大きく南へ迂回する。
 輸送力が増強されている。
 トンネルは長くなる。
 在来線の倍以上の6.5キロ。
 トンネルで過ぎてしまう。

行動 (4)
 西へたどってみよう。
 山を下りた
 天田峠を目指すことにしよう。
 天田峠に着く。

考え (9)
 その例に漏れない。
 白馬岳も一望らしい。
 説があるのを思い出した
 地名が場所を説明している。
 道が続いていたようだ。
 10メートル開削されたわけだ。
 格段に楽になった
 興味深い地域である。
 仕事が減らないのはどうして
 だろうか。

 (下線部 7  総数 30)

4.文末の考察
 臨場感は、現在形の文末によって創出されているといえます。なぜなら、文末の8割(=23÷30)が現在形です。一方、過去形の個数は、「過去の事実」4、「行動」1、「考え」2の合わせて7つです。「迂回した。」よりも「迂回する。」のほうが、今進んでいるかのようです。

 「現在の事実」に体言止めが4つあり、現在形の「だ。」「である。」が省略されています。
 鳥居前には馬上姿の義仲像。
 有磯海と呼ばれた富山湾。
 天田峠への坂道。
 在来線の倍以上の6.5キロ。

 「行動」と「考え」にある3つの過去形は、現在形に変換可能です。
 山を下りた。 → 山を下りる。
 説があるのを思い出した。 → 説があるのを思い出す。
 格段に楽になった。 → 格段に楽になっている。


参考文献
1.読売新聞 2008年6月28日夕刊  「今尾恵介の地図を歩く 倶利伽羅くりから峠(石川県・富山県) 重なる新旧道路・鉄道」


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